多摩産材の現状と課題


「多摩産材は高い」という話をよく聞きます。とうきょう森林産業研究会、第83回定例会にて「多摩産材の現状と課題」というテーマで研修会を開催しました。
 

その原因は…

平成25年の木材受給報告書の資料によると、一般的な木材の価格は73,300円/m3となっています。それに対して多摩産材の価格は100,000円/m3と言われており、市場価格の1.2~1.5倍、場合によっては2倍にもなるとも言われています。
その原因は、どこにあるのでしょうか?
以下の切口から考えてみました。
*材料となる原木は?
*「複雑」と云われている流通構造は?
*製材工場のコストは?
*そもそも、多摩産材製品っていくらなの?
 

原木の状況

多摩産材は日の出町にある多摩木材センターに集められます。ここが原木市場です。ここでの木材取扱料等の推移のグラフを見てみると、木材の単価は株価のように上下変動がありますが、スギ4m材で全国単価が10,000~14,000円/m3なのに対し、多摩木材センター単価は7,000~12,000円となっており、丸太の値段は全国単価より2,000~3,000円安いことが解ります。
多摩産材は元々高いのではありません。元々は安いのです。それがどのように高くなってゆくのでしょう?
 

住宅用木材の流れ

かつて原木市場に集められた丸太は製材工場で材に加工され、問屋、市場、小売店(材木店)を経て大工・工務店の手に渡っていました。
木材が売れていた時代は流通の過程で役割分担がなされ、流通のしくみが機能していましたが、縮小傾向にある市場環境では変化してゆかねばなりません。
立川と八王子にあった製品市場は現在では閉鎖され、秋川では生き残っているようです。
現在では多摩地域の製材業者から直接に大工・工務店が購入している流れが大半です。
 

製材工場のコストは

東京における製材工場の数は50年前には約280社ありましたが、年々減少し、今や28社と1/10になってしまいました。
製材の主な販売先は8割近くを工務店となっています。
従業員は5人以下の会社が約半数、75%が10人以下の会社です。
年間の供給能力は100m3以下が11%、101~1,000m3が48%、1,001~10,000m3が37%の割合で、零細工場が半数あります。
原木のストック量も100m3以下の所が半数近くあり、それらの製材所は注文を受けてもすぐには出荷できない状況です。
このように零細工場が多く、効率的に動けていない現状があるようです。
 

そもそも、多摩産材製品っていくらなの

平成25年の一都三県の木造戸建住宅の新築着工数は125,023棟、東京都は37,505棟ありました。
一方、多摩産材の民間利用量は推定値で年間6,342m3です。仮に一棟の木造住宅に10m3の木材を使うと計算すると、多摩産材では年間600棟の住宅しかつくることが出来ません。新築着工戸数と比べてみても僅かな数なので、多摩産材でつくる住宅はニッチ産業といえます。
製材所は多摩産材でつくる家づくりのために大工・工務店から依頼を受け、家一棟分の柱、梁、母屋、垂木など少量多品種な製材をおこないます。そのため、現状での多摩産材の価格は、特殊なニーズによる合意の上での価格になっている状況ということでした。
 

多摩産材の将来像

森林を取り巻く状況の変化によって、今後も以下のような問題に対処してゆく必要があると思われます。
*キーマンは川中
*製材所の後継者は?
*大工・工務店など取引先の将来性は?
*協業化、組織化の可能性は?
*資源量は?
 

多摩産材情報センター

2014年6月23日、東京都青梅合同庁舎1階に設置された「多摩産材情報センター」の開所式がおこなわれました。
多摩産材の製品や調達などに関するご相談にお答えする情報窓口です。
多摩産材供給者である製材所と利用者である工務店・設計事務所をつなぐ役割を担い、多摩産材の利用を促進してゆく取組みです。
 


フォレストドームの取組みが、高くない多摩産材の活性化につながればと思っています。

Follow me!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。